13.生まれた時から嫌いなんです。

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13.生まれた時から嫌いなんです。

「てっきり嫌われているのかと思っていました。なぜイザベラ様が兄上の肩を持つのか全く理解ができません」 エドワード王子は微笑みながら優しい声で私に話しかけているのに私は彼の怒りを感じていた。 「エドワード王子殿下、ルブリス王子は信じていたものに裏切られて絶望の中にいたのです」 私は世界中が敵のように感じてしまい、苦しんでいたルブリス王子殿下を思い出した。 「自業自得ではないですか。兄上は国政や勉強を疎かにし女に夢中になり、卒業パーティーでなんの落ち度もない婚約者を侮辱しました」 エドワード王子がルブリス王子が精神を強制されて苦しんでいたとは知らないし、信じないだろう。 「被害者とされる私がルブリス王子を許しているのです。エドワード王子殿下も故意にお兄様を傷つけるのはやめてあげてくれませんか?」 「もしかして、イザベラ様の16歳の誕生日の食事会のことをおっしゃっているのですか?私は兄上がサイラス国王陛下の婚約者になったイザベラ様を、いつまでも自分の婚約者であるかのように呼び捨てをしているのを注意しただけですよ」 「あの場でルブリス王子殿下に恥をかかせるように、注意する必要はありましたか?2人きりの時にこっそりと教えてあげれば済む話ではございませんか?」 「そうですね。僕は兄上を傷つける目的で、兄上の大好きなあなたの前で恥をかかせてやろうと思いました。兄上のことが、生まれた時からずっと嫌いなんです。イザベラ様には僕の感情が理解してもらえていると思ったのに残念です」 笑顔でエドワード王子が言うと曲が終わった。 私がお辞儀をしている間、彼は私を無視するように会場の外へと出ていった。 私はエドワード王子を知らずに傷つけていたのだろうか。 エドワード王子殿下は10歳の婚約者顔合わせでルブリス王子殿下に傷つけられた私に優しく声をかけてくれた方だ。 卒業パーティーの時も私のことを助けるように声をあげてくれた。 幼少期から政治に興味をし、たくさん政策を立案してきた彼は次期国王に相応しい。 それなのに私はルブリス王子殿下を応援して、今、エドワード王子は王位継承権争いで劣勢を強いられている。 人混みを掻き分けて、エドワード王子を追うと彼は猛吹雪の王宮の外に出てしまった。 「えっ?なんで、どうしたら良いの?」 私は一瞬迷ったが、前が見えないほどの猛吹雪の中、彼のキラキラの金髪を追いかけた。 「エドワード王子殿下、待ってください。お話をしたいのです。このような寒さの中、外に出ると危ないです。湖に落ちてしまうかもしれません」 私は精一杯叫ぶが吹雪の音に声がかき消されてしまう。 この吹雪で見えないが王宮の中には湖があり、足元に注意しないとエドワード王子殿下が落ちてしまうかもしれない。 「足が⋯⋯」 ヒールが雪に突っかかってしまい、私は慌てて靴を脱いで彼を追いかけた。 エドワード王子が木に額をつけて寄りかかっているのが見えた。 「優太、優太なの?」 私は気が付くとエドワード王子を私の前世の弟の名前で呼んでいた。 弟が虐められたのは私のせいだった。 弟は頭もよく、運動神経も良かったからか、小学校の頃はバレンタインチョコをもらってくることもあった。 しかし中学に入学して、虐められていた私の弟とわかると虐められはじめた。 私はその頃には自分は不登校で家にいたから、弟が虐められていることに気が付けなかった。 虐めは私と同学年だった彼の先輩に当たる人からはじまり、同級生も巻き込んだ。 優太は私や家族に心配させない為にずっとそれを隠していた。 ただ、暴力的な虐めでボロボロになった制服とカバンを持って家に帰れない日があった。 夜になっても帰宅しない彼を探しにいったら、公園の木に頭をつけて寄り添っていたのだ。 今、その姿をエドワード王子に見てしまい私は思わず弟の名前を口にしていた。
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