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大阪から本社に転勤の辞令が降りたとき、ほんまはめちゃくちゃ凹んだ。
東京の人間は冷たいって聞くし。
実際そうでもなかったけど、一人だけは違ったな。
経理の木ノ下真人。
ニコニコしてるけど、まるで仮面が張り付いてるみたいな。
その仮面の下を見たくなって、近づいて、思ったよりはまってもた。
気が付いたらずっと探してた。
そしてすぐに見つけられた。
俺と真人は正反対や。
だから時々めんどくさいこともある。
でもそれでも、側にいたいと思うし。
きっと俺はどんなに生まれ変わっても彼を目指してしまう。
そういう風にできている。
一年経った今でも、変わらずに恋をしてる。
「約束の一年が経ちましたけど、一緒に住んでくれるん?」
「てか、もうほとんど一緒に住んでるようなもんじゃない。」
「まぁね。」
「でもけじめとして。一緒に住もうか。」
「真面目やなぁ。」
「うるさい。」
「そこが好きやねんけど。」
「いちいち言うな。」
恥ずかしがる彼が見たくてわざと言う。
「俺のこと好き?」
またはぐらかされるやろうけど。
「好きやで。」
、、、え?!
「聞いといて真っ赤になるなよ。」
「え、、、いや、、あ、、」
やられた!
「たまには素直になってみるのもいいもんだ。」
「もう一回言うて?」
「断る。俺の好きは値打ちが高い。そうそう聞けると思うなよ。次はまた一年後だ。」
「てことは、一年後も一緒におるってことやな。」
にやにやして言うと、彼は部が悪そうに俺の唇を塞いできた。
いいんや。
一年に一回で。
俺を骨抜きにするのは。
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