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「それでさ、散歩の途中でキャラがおやつジャーキーを道路に置いて、振り向きもせずに歩き出したんだよね」
「ああ、俺が散歩行ったときも同じようなことがあったぞ」
お母さんの作ったハンバーグを食べながら、今日のキャラの散歩の様子を話していた。お父さんも同じような経験があるのか。
「なんの意味があるんだろうね」
「さあな、俺には犬の気持ちはよくわからん]
「檀のときと、お父さんのとき、場所は一緒なの?」
お母さんが僕のグラスに麦茶をつぎ足しながら、思いついたように質問を投げかけてきた。
「ん、ああ、俺はあの川のそばのカーブのところだな」
「僕は三丁目の信号のない交差点のところだったよ」
「ふーん、場所も離れているし、なんなんだろうね」
「キャラが人間の言葉を話してくれれば楽なのにな」
「それはそれで怖いよ」
キャラが人間の言葉を話すなんて、と三人で笑いながら、美味しい夕食は進んでいった。このときはまだ、お父さんもお母さんも僕もなにもわかっていなかったんだ。
◇◆◇◆
ある晴れた日曜日の朝、自分の部屋で本を読んでいると、インターホンが鳴り来客を知らせた。お母さんが対応に玄関に向かうのを追い越すようにキャラが走っている音が聞こえる。
「檀にお客さん」
階段の下からお母さんが声をかけてきた。僕にお客さん? 友だちが遊びに来たわけではなく。心当たりがないまま居間に降りていくと、応接テーブルのところには若い女性が座っていた。その足元にはキャラが纏わりついている。
「えっと」
「あんたが檀?」
「はい、そうですけれど」
「ふーん、なるほど、まだなのか」
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