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水曜日の朝、竜馬の部屋のドアをノックする。
「竜馬、行こ……!」
ドアを開けたけれど、もぬけの殻。一緒に学校に行こうって約束してたのに!
「んもう……!」
廊下を早足に歩いてリビングへ向かう、リビングにもダイニングにも竜馬はいない。母がキッチンで洗い物をしていた。
「ママ! 竜馬は!」
「少し前に行ってきますって出て行ったわよ」
「もう! 引き留めておいてよ!」
ご飯の時に、一緒に行こうねって話てたのも聞いてるはずなのに! 母は優しすぎるのが問題だ!
「ごめんね、言ったんだけど、うんって言いながら行っちゃったの」
んもう、竜馬も竜馬だ! ひとりで行きたいならそう言って欲しい!
なにはともあれ、追い付こうと慌てて家を出た。
地蔵坂の頂上近くにある家から、中華街の入口にある高校まで行くにはいくつかのルートはある。私はいつも一番わかりやすい地蔵坂を使う、だからその坂を小走りに行ったけれど、竜馬に会うことなく学校に着いてしまった。
そうまでして会おうとしないのは、やっぱり避けられてるんだろうな──。
子供の頃が懐かしい。
ずっと一緒にいたの。
大好きって言い合ってたの。
あんな風にそばにいたいだけなのに。
ひとつ屋根の下に住んでいるのに、あからさまに避けられてしまうのは辛い。
嫌いになったなら、はっきりとそう言ってくれればまだすっきりするのに──と思いながら問い詰めることができないのは、やはり引導を渡されるのが辛いからだな。
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