藤堂美愛と花村竜馬

2/2
253人が本棚に入れています
本棚に追加
/100ページ
水曜日の朝、竜馬の部屋のドアをノックする。 「竜馬、行こ……!」 ドアを開けたけれど、もぬけの殻。一緒に学校に行こうって約束してたのに! 「んもう……!」 廊下を早足に歩いてリビングへ向かう、リビングにもダイニングにも竜馬はいない。母がキッチンで洗い物をしていた。 「ママ! 竜馬は!」 「少し前に行ってきますって出て行ったわよ」 「もう! 引き留めておいてよ!」 ご飯の時に、一緒に行こうねって話てたのも聞いてるはずなのに! 母は優しすぎるのが問題だ! 「ごめんね、言ったんだけど、うんって言いながら行っちゃったの」 んもう、竜馬も竜馬だ! ひとりで行きたいならそう言って欲しい! なにはともあれ、追い付こうと慌てて家を出た。 地蔵坂の頂上近くにある家から、中華街の入口にある高校まで行くにはいくつかのルートはある。私はいつも一番わかりやすい地蔵坂を使う、だからその坂を小走りに行ったけれど、竜馬に会うことなく学校に着いてしまった。 そうまでして会おうとしないのは、やっぱり避けられてるんだろうな──。 子供の頃が懐かしい。 ずっと一緒にいたの。 大好きって言い合ってたの。 あんな風にそばにいたいだけなのに。 ひとつ屋根の下に住んでいるのに、あからさまに避けられてしまうのは辛い。 嫌いになったなら、はっきりとそう言ってくれればまだすっきりするのに──と思いながら問い詰めることができないのは、やはり引導を渡されるのが辛いからだな。
/100ページ

最初のコメントを投稿しよう!