気紛れに優しく

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 テーブルの上にハンバーガーの乗ったトレイを置くと、隣のテーブルからヒラヒラと小さな紙が落ちた。俺が起こした風で落ちてしまったのだろうが、持ち主である女性はそれに気付くこと無くスマホを弄り続けている。  俺は椅子に座って手を伸ばしそれを拾った。ジロジロと見ることはしなかったが、それは何かの時間が書かれた付箋だった。 「落ちましたよ」 「あ、すみません」  いえ、と営業の(さが)で愛想良く口角を持ち上げたが、彼女は笑い返すでもなく固い表情のまま目を眇めた。化粧の所為なのか吊り上がった瞳はひどく冷たい印象を与えてくる。 (愛想ねぇ)  彼女はまた無造作にテーブルの上に付箋を置き、気怠げにスマホを弄りだした。長い爪は綺麗に整えられ、赤いネイルが塗られている。
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