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(いらないなぁ、と思う)プロローグ
豪華絢爛な部屋で。ふたりの青年が話をしている。
・・・いや、まだ少年と呼んだほうが正しいのかもしれない。
一人はひょろりと背が伸び始めたころ。もう一人はそれに筋肉がつき始めたころ。
このくらいの年齢に相応しい性急さで。
「フェイジョアを人質になど出来るか!」
がっしりし始めたほうの少年が、声を荒げる。
もうひとりは、冷めた目で彼を見る。
「そうと決まったわけでもないでしょう」
ふたりは乳兄弟で。身分差はあれど、遠慮は無い。
「そうに決まっている。歴史が証明している」
うろうろと部屋を歩き回り、芝居がかって”彼”は振り向いた「お前だってそう思うだろう?」
「まったく。妹のこととなると・・・」
はぁぁ、と大げさにため息をつく乳兄弟。
言い出したら聞かないと知っている。知りすぎるほど知っている。
「ちょうどいい機会だろ?」
父親の執務室から、こっそり持ってきた封筒を。
ひらひらとさせながらも”彼”は。燃えろとばかりに睨みつけている。
「しかし・・・相手は掌中の珠と言われる・・・」
乳兄弟は”彼”を引き留めようと言いかけるが、言葉は遮られた。
「いいじゃないか、そのほうが人質としての価値は上がるんだ」
酷薄そうな薄い唇がにやりと歪むのを見て、乳兄弟のほうはまた。
はぁぁ。と大きくため息をついて見せた。
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