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「あの噂、本当だよね。矢見さんが援交してるって……」
「絶対マジだよ。何人か見たって言ってたもん。矢見さんが男の人を家に連れ込むのを……」
「父親じゃないの?」
「父親ではない。まあ、最初はそうなんじゃないかとも言われてたんだけどね。連れ込む人は、毎回違うオッサンらしいよ。遠目から見たら、みんな同じ人に思えるけど、よくよく気をつけて見たら、微妙に違うんだって」
「えぇー……そんな毎回なんてほど、大勢のオッサンと家で……」
「ね、ヤバいよね」
「でも2年になってからは、そういう噂もさっぱり聞かないね。援交やめたのかな」
「若林がこのこと知ったら、どうなるんだろ」
援交? 私が? 父親くらいの年齢の男を、度々家に連れ込んでいる?
あまりの怒りと衝撃に、一瞬息をすることも忘れる。
事実無根のデタラメだ。私は一度もそんなことしていない。彼女たちの話は、全て真っ赤な嘘だ。
言葉が出てくるのは、いつも斬りつけられて少し時間が経ってからだ。私は私を侮辱する女子二人に、何一つ弁解も言い返しもできないまま、学校へ辿り着き、授業を受けた。
もちろん先生の話など耳に入ってこなかった。
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