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伊織は駿に連れられながら、首を横に向けた。
「待った。ちょっと待ってくれ、駿」
「何ですか?」
寄りたいところがある、と伊織が向かったのは、学校園だった。
まだ春も早く花の姿は見えないが、緑の息吹が力強い。
「駿、この小菊を覚えているかい?」
「あ、これは……」
初めて伊織さまとお喋りした時に、話題に上げた、小菊。
「小菊の花言葉を調べてみたらね、『逆境の中でもめげない』とあったよ」
まさに、君にぴったりの花言葉だと思わないか?
伊織はそういって、菊の葉を撫でた。
もう、あの可憐な花は咲いてはいないが、逞しい若葉が吹き始めている。
「君は、本当によく、私について来てくれた」
「嫌ですよ、伊織さん。過去形にしないでください」
そうだった、と二人で笑った。
これからも、共に歩むのだ。
新しい世界を、まだ見ぬ道を。
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