四章

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リリアーヌの言葉はすべて自分のためのものだった。 一番に可愛がられたい。コレットはリリアーヌにとって心地よい場所を作る道具でしかなかった。 だから壊れようがなくなろうがどうでもよかったが、コレットがいなくなり状況が変わったことで現状に不満を抱いても尚、コレットのせいにしているのだろう。 しかし、もう胸が痛むことはない。 「……さよなら」 コレットは決別するように小さな声で呟いた。 暫く経った後にバサリと何かが広がる音が耳に届く。 『もういいですよ』 ヴァンの声が聞こえたコレットは瞼を開く。 何かを隠されるように置かれた布には真っ赤な血が滲んでいた。 もうコレットを罵る声は聞こえなかった。 ヴァンは剣についた血を払い、腰にある鞘へと仕舞う。 『コレット、大丈夫ですか?』 『えぇ、大丈夫よ。ヴァンがそばにいてくれるもの』 『そうですか』 『ヴァンこそ大丈夫?』 シェイメイ帝国の言葉でヴァンに問われて、コレットは同じように返事を返す。 あれだけの人数を斬ったはずなのにヴァンは返り血すら浴びていない。 「我が妻、コレットを虐げてきた元家族のミリアクト伯爵家と妻の命を狙ったディオン・フェリベールにはこちらから処罰を与えさせていただきました」 「……ッ!」 有無を言わせないヴァンの言葉に国王は呆気に取られている中、声を上げたのはウィリアムだった。
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