1/9
3人が本棚に入れています
本棚に追加
/9ページ
ここに人骨が一つございます。 見たところ、何の変哲もない、どちらかと言えば綺麗な形をした人骨。 但しこれは、そんじょそこらの唯の人骨ではございません。 男か女か、そんな事はまず(もっ)て、今のところどちらでもよろしいではございませんか。 そもそも今となっては、この人骨が以前は男であったのか女であったのか、美男であったか美女であったか、大臣であったかはたまた乞食であったか、それすら分からないのでございますから。 有り体に申しますと、この人骨、生前はそこそこの御仁でございました。 幼い頃から人には神童と呼ばれ、相応の学歴を持ち、安定した仕事を勝ち取り、所謂(いわゆる)良いところの女を妻としました。 二人の子、俗に一姫二太郎と申しますように、女児と男児を相次いで授かり、世間も羨む絵に描いたような幸せ家族。 せれでいて当人は世間の覚えも(すこぶ)()いときています。 さて、そこで少しの勘違いが生じた様でございまして、男は…そう、既にお気付きかと思われますが、これは生前男でございました。 この生前男だったものは、自分が人より優れている、人より秀でていると、殊更(ことさら)に強く思いすぎたのでございましょう。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!