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ここに人骨が一つございます。
見たところ、何の変哲もない、どちらかと言えば綺麗な形をした人骨。
但しこれは、そんじょそこらの唯の人骨ではございません。
男か女か、そんな事はまず以て、今のところどちらでもよろしいではございませんか。
そもそも今となっては、この人骨が以前は男であったのか女であったのか、美男であったか美女であったか、大臣であったかはたまた乞食であったか、それすら分からないのでございますから。
有り体に申しますと、この人骨、生前はそこそこの御仁でございました。
幼い頃から人には神童と呼ばれ、相応の学歴を持ち、安定した仕事を勝ち取り、所謂良いところの女を妻としました。
二人の子、俗に一姫二太郎と申しますように、女児と男児を相次いで授かり、世間も羨む絵に描いたような幸せ家族。
せれでいて当人は世間の覚えも頗る良いときています。
さて、そこで少しの勘違いが生じた様でございまして、男は…そう、既にお気付きかと思われますが、これは生前男でございました。
この生前男だったものは、自分が人より優れている、人より秀でていると、殊更に強く思いすぎたのでございましょう。
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