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凛奈が若者に助けられた、それは過去に戻った渉の行動だ。
つまりこれは、ただ長い夢が覚めただけではなく、過去を変えて戻ってきた、ということだろうか……。
「本当言うと……、凛奈と別れ話で揉めている時、好きな人ができたって言われてホッとしたんだ。あの時、渉に会う度に心が浮かれて……、顔が見たくて店に行くといつも探してしまって……正直言うと惹かれていた」
「えっ……」
「いや、この話はしたか……。ほら、ここに越してきて、渉とベランダで会った時、大声上げて驚かせただろう。あの時、運命だって思ったんだよ。それで……押して押して……困っている渉に何度も告白して……」
「ええ!?」
「ちょっ……、おい、それも忘れたのか!?」
話がおかしいことになっている。
再会して浮かれて、猛アタックで泣き落としたのは、渉のはずだった。
それが、佑月の方からということになっていて、理解が追いついていかなかった。
「なんだよー、もう何度だって言ってやる! 好きだ、好きだ、好きだ! 渉、俺と付き合ってくれ!」
「は……はい…………って、もう、付き合ってるじゃん」
「だってさ……渉が全然覚えてないみたいな顔をするから……」
口を尖らせて、甘えるように渉の髪に頬を擦ってきた佑月を見て、渉の心臓はドキッとしてしまった。
こんなに直接的に熱い表現をする人ではなかった。
これが、佑月の本来の姿なんだと思うと、ふつふつと喜びが湧き出してきた。
「絶対幸せにするって言っただろう」
「え、それ俺の台詞」
それまで取られてしまったのかと、渉は慌てたが、嬉しそうに笑った佑月が優しく抱きしめてきた。
「なんか、渉がすごい俺を好きみたいで嬉しい」
「なっ……そんなの当たり前だよ」
「それそれー、いつもあんまり好きだって言ってくれなくて、無理やり付き合ったのかなって、ずっと心配で……」
それは渉がしていた心配だった。
それも取られてしまったのかと驚いたが、よく考えれば、安心させる方法は、心配していた自分だからこそ知り尽くしていた。
「ちゃんと好きだから……、大丈夫。佑月、大好きだよ、俺達、一緒に幸せになろうね」
「渉……」
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