最終組

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「よく来たな。待ちわびたぞ。勇者よ」  玉座の間に現れた若者に、魔王は悠然と椅子から立ち上がり自己を紹介した。 「余は魔王! 全ての魔物の細胞を持ち、全ての魔族を統べる絶対的強者、だ……」  目が合った瞬間、魔王の心境に変化が起こり始めた。 (な、なぜだ……。なぜ人間を見てこんなにも胸が熱くなる……?)  臆することなく鋭く睨み付ける精悍な姿に、うっとりと目が釘付けになる魔王(♀)。 (そう……。こやつは勇者と言えどただの人間。ただの人間の癖に、たった一人で数多(あまた)の敵を打ち倒し、苦難の道を乗り越え、ついに我の前に現れた。なんと健気で、努力家で、勇気ある人間だ。これほどの人間が、いたのか……)  何故ここまで人間の若者に惹かれるのか。魔王はその理由(わけ)に薄々気付いた。 (……そうか。我にも、ほんの僅かだが、人間の血が入っているのだな)  フッと息を漏らすと、魔王は胸の奥底から溢れ出る感情を認めた。 「勇者よ。戦いは終わりだ。これからは魔族人間、共存できる世界を作ろうではないか」 「…………」 「そ、そのためには魔族代表である余と、人間代表であるお前と契りを結ぶのが手っ取り早いと思うのだがどう」 「いや普通に城の姫と婚約してるんで無理」  魔王はフられた。 「な……ならばもういいっ!! 人間など滅ぼしてやるううううう!!」  こうして何代にも渡り受け継がれてきた血筋はあっけなく途絶えた。
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