1人が本棚に入れています
本棚に追加
/28ページ
「なんの騒ぎだ?」
振り返ると校門の向こうには高級車がとまっていて、ちょうど中から人が降りてくるところだった。よく目立つ金髪に青い目をした女の子だ。俺たちと同じセーラー襟の制服に身を包んでいる。同級生だろうか?
「おい、あれ灰ノ宮さんだろ」
「あれが噂の……! 灰ノ宮財閥のご令嬢かよ!」
「イギリス人とのクォーターだっけ?」
「漫画のキャラみてえじゃんそれ!」
近くに居た男子生徒がそのような反応を見せていた。有名人らしい。
「畔、早く行こう。遅れる」
閑は騒動には興味なさげに俺の二の腕をつついて急かす。
「そうだな――」
『……けて!』
不意にどこかから声が聞こえてきた気がして、俺は周囲を見渡す。
「今、声がしなかったか?」
「そうかも」
閑は首を傾げてそう答える。
『たすけて……!』
誰かが助けを呼ぶ声が、今度はさっきよりもはっきり聞こえた。向こうの建物だ。
「閑、先行ってて! 俺は様子見てくる!」
閑に荷物を預けて俺は走り出す。声が聞こえたと思しき建物は体育倉庫だった。入口の引き戸を開けて薄暗い中へ足を踏み入れると、砂埃が舞う。
最初のコメントを投稿しよう!