第1話「俺、男なんですけどいいんですか?」

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「なんの騒ぎだ?」  振り返ると校門の向こうには高級車がとまっていて、ちょうど中から人が降りてくるところだった。よく目立つ金髪に青い目をした女の子だ。俺たちと同じセーラー襟の制服に身を包んでいる。同級生だろうか? 「おい、あれ灰ノ宮さんだろ」 「あれが噂の……! 灰ノ宮財閥のご令嬢かよ!」 「イギリス人とのクォーターだっけ?」 「漫画のキャラみてえじゃんそれ!」  近くに居た男子生徒がそのような反応を見せていた。有名人らしい。 「畔、早く行こう。遅れる」  閑は騒動には興味なさげに俺の二の腕をつついて急かす。 「そうだな――」 『……けて!』  不意にどこかから声が聞こえてきた気がして、俺は周囲を見渡す。 「今、声がしなかったか?」 「そうかも」  閑は首を傾げてそう答える。 『たすけて……!』  誰かが助けを呼ぶ声が、今度はさっきよりもはっきり聞こえた。向こうの建物だ。 「閑、先行ってて! 俺は様子見てくる!」  閑に荷物を預けて俺は走り出す。声が聞こえたと思しき建物は体育倉庫だった。入口の引き戸を開けて薄暗い中へ足を踏み入れると、砂埃が舞う。
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