25 交渉決裂

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25 交渉決裂

 北の国境線で膨れ上がるシアランディア軍を、ティアランディアも黙って見てはいなかった。西の国境でのツアラングとの紛争も落ち着ていたので、兵力を北に集め始めていた。  国境を挟んで、シアランディアの大軍とティアランディアの大軍がにらみ合う中、ティアランディアの陣に少女と老人の使者が訪れた。  アリンとデスモンドだった。  彼らが陣に入り、ティアランディアの有力貴族と面会しているとき、シャノンがその場に現れた。 「この者は、裏切りものです!捕らえて殺して!」  金切り声で怒鳴るので、兵がなだれ込んできたので場は騒然とした。 「こちらの要求はのんでいただけないか?」  騒ぎの中、デスモンドが大声で貴族の男に訊くと、男は、 「マーリーン様は渡せぬ。それは王の意志だ」 と答えたので、デスモンドは懐から何か塊を出して、それに火をともして空に投げた。  多量の煙が出る素材を混ぜて作った「のろし玉」だった。  それはシルフィーたちによって、空に舞い上がり、煙が天に向かって一筋伸びた。  交渉決裂の合図だ。
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