レルネ城

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謁見室とされた部屋は豪華な装飾が施された、赤い絨毯が敷き詰められた部屋で。 それなりに広い室内には机と椅子。 そして何人かの体の大きな男の人。 公爵様より年上と思われるおじさま。 王様より年上と思われるおじさま。 威厳たっぷりな軍人という言葉が似合いそうな方々。 武力。 確かにそう言えそうな面々である。 私のお父様はこんな方々を率いていらしたのか。 きっとお父様が一番ひ弱。 私は公爵様に紹介されて、丁寧に礼をしてみせる。 公爵様は1人ずつ挨拶をさせて名乗らせる。 どの方も大きく筋肉質という印象ばかりで、すぐには顔と名前は一致しそうにはない。 ただ、私という嫁となるものを紹介するところが、ご家族ではなく、この方々となるところから、公爵様のご家族と考えればいいように思う。 公爵様を支えてくれる方々。 私は深くなにかを問われることもなく。 厳ついおじさま方は、公爵様が連れてきた私の容姿になにかを言うこともなく、祝われる言葉をくださる。 私の視線が見上げるものとなるから、膝をついて敬った姿勢で挨拶をしてくださる。 睨まれるようなことはなく、私も大切にしてくださるように思う。 厳ついおじさま方との挨拶を終わらせると、私の部屋へと案内される。 2階。 まだ調度品や私の衣装は入れられていないけどと、公爵様は扉を開けられた。 広いお部屋。 いくつかは調度品は置かれている。 そして、これがレルネの女戦士かといった、軽鎧を身につけた女性が3名、頭を下げて迎えてくれた。 きりっとした女性たちだ。 体が大きいわけでもないけれど、姿勢がよくて頼りになりそう。 ゴリラなんかじゃない。 スリムで背の高いかっこいい女性というもの。 男装女子というのかもしれない。 どこか女性らしさがある面立ちなのに男性のようなかっこよさ。 女性にモテる女性となるかもしれない。 「サフィア、彼女たちに君の世話を頼むつもりだ。メイドとして主の世話をするために城にいるわけでもなく、男に混じって訓練している兵士だが、男に世話をしてもらうよりはいいと思う。王城からメイドを連れてきたほうがよかったか?」 「彼女たちが私の世話をすることを仕事としてもいいのなら使わせていただきます。とても凛々しくてかっこいい方々です」 私はどこか興奮して公爵様に答えてしまう。 レルネの女戦士はかっこいい。 「男らしくあるような女よりメイドのほうがいいようにも思うんだけど」 公爵様がどこか嫌がってくださる。 「殿下、我々は妃殿下となる方の失礼のないように言われております。妃殿下を守り、お世話をさせていただきます」 礼をする姿も凛々しくてとてもかっこいい。 「守るほうばかりに優秀なのはいらないと思うんだ」 「妃殿下はとても可愛らしくあられるのでちゃんと綺麗に整えさせていただきますよ?」 「レルネの女兵士の中では見目がいいほうとは思うが、おまえたちは女として見目がいいとは思えないんだ。…どう見ても男だろ」 「失礼な。私たちは女です」 凛々しいお姉様方は公爵様とそんな気軽ともとれる会話をされる。 確かにイケメンだらけ。 こちらへと長く細い指で柔らかく手をとって、私はソファーで休ませてもらえる。 膝をついて自己紹介をくださる。 「私はレヴィと申します。レヴィ・アンジェリル。レヴィとお呼びください」 私の手を軽く握られて、にっこりと笑ってくださる。 かっこいい女性にドキドキしてしまう。 「あ。レヴィ、ずるい。妃殿下、私はノーラン・リベラと申します。ノーランとお呼びください」 公爵様と話していた方も私のそばに膝をついて自己紹介をくださる。 あとお1人と視線を向けると、ゆったりとした笑みで私に頭を下げられる。 「ケリー・パーカーと申します。貴族や淑女としての嗜みには不十分なものと思われますが、精一杯勤めさせていただきます」 執事さんだと思う。 兵士でもなく、メイドでもなく、よくできた執事がきっと似合う。 レルネ城に着いたばかりではあるけれど、公爵様もいらっしゃるし、ハリボテのお城をつくられる前に城の図面を持ってきてもらって抜け道のお話をさせてもらう。 侵入者がいた場合、袋小路となって追い詰める道も提案。 私の従者となってくれるケリーたちは、そんな私を最初は不思議そうに見ていたけれど。 避難路ともなるそのお話を興味深く聞いていて、こうすれば?と提案もしてくれて、あがった案を図面に書き込んでいってくれる。 公爵様もこの部屋の場合と、こちらが追い詰められそうな部屋の避難路を指で示してとお城の改造計画は盛り上がる。 この区域はこれで…と夢中になって話していたら、こんこんっと扉が叩かれてギルさんが顔を出した。 なにをしていたかを話すと、ギルさんは息をつかれる。 「今日のところはゆっくりとお休みください。殿下は明日にはいらっしゃいませんが、城はありますから。建築士に声をかけて、サフィア様のご希望通りとなるよう計らいます」 「僕もこっちでいいと思うんだけどな?」 「殿下にはレルネの士気のため、働き続けていただきます」 「鬼だと思うんだ」 「サフィア様はしっかりとこの者たちが守るので、お気になさることなく仕事に励んでください」 「僕がサフィアと親しくなりたいのだけど?」 「私にはもうじゅうぶん親しくなられていると思えます」 「まだサフィアと顔をあわせて3日目だっ」 「1ヶ月も会えないようなことはありませんよ。帰城されたらサフィア様に挨拶をなさればいいだけでしょう?」 「おまえが邪魔するよな?」 「結婚するまではそうですね」 「普通のことのように言うなっ」 別に……いいかなぁとも思ってみる。 公爵様の服の下の体を見てみたいから。 きっと筋肉なのだけど。 さわりまくってみたい。 そんな興味はある。
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