第1話『アイリの魔法と、ディアの補習』

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第1話『アイリの魔法と、ディアの補習』

ここは、悪魔が生きる世界、『魔界』。 普段は魔法で隠しているが、悪魔にはコウモリのような羽根がある。 そして魔界には『魔獣』という生物も生息している。 人間界との違いはそのくらいで、日常は変わらない。 その魔界を統べる悪魔『魔王』と、人間である王妃との間に生まれた、王女アイリ。 栗色のボブヘアに、栗色の瞳。母親に似て落ち着いた色合いと性格だが、童顔なので幼く見える。 悪魔特有の褐色肌ではなく色白だが、悪魔特有の黒いコウモリの羽根を持つ。 この時のアイリは、魔界の高校3年生。 王女でありながら気弱で大人しい性格のアイリは、幼い頃からずっと恋をしている。 その恋の相手とは…… ここは、魔界の学校『オラン学園』、高等部。 その名の通り、アイリの父である魔王オランが設立した学校だ。 放課後の教室で、アイリは今日も意中の『彼』と二人きりで密会中。 「それでは、『魔法』の授業の補習を行います」 そう言って教壇に立ったのは、紳士な軍服スーツ姿のイケメン教師。 見た目は20歳手前くらいの青年で、ブルーグリーンの爽やかな髪に金色の瞳。 彼こそが、この学校で『魔法』の授業を担当する教師、ディア。 そして、この補習を受けるたった一人の生徒は、アイリ。 教卓の目の前の机に座るアイリと、教卓のディア。まさにマンツーマン。 アイリは補習という自らが置かれた状況を忘れて、思わずニヤニヤが止まらない。 (ふふ……ディアと二人きり……今日もディア、カッコいい……) そう、ディアこそがアイリの意中の人。だからこそ、こんなに嬉しい事はない。 アイリは、この補習の時間が大好きなのであった。 「アイリ様、最近は特に魔法の調子が優れないようですが、いかがされましたか?」 ディアの本職は魔王の側近であり、アイリとは『教師と生徒』の関係である前に『主従関係』。 そして王女の世話役でもある彼は、アイリを赤ん坊の頃から面倒を見て育ててきた。 そんな親心もあって、補習が必要なほどに成績が落ちてしまったアイリを心配している。 「ディア、ごめんなさい……」 アイリは口では謝りつつも、ディアと二人きりの補習をむしろ喜んでいる。 だからと言って、わざと赤点を取った訳でもない。 近頃、魔法が上手く制御できなくなってきたのも事実で、その理由はアイリ自身にも分からない。
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