色褪せた指輪

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 美優より早足になって、前方に回り込む。美優の顔がかずきおじちゃんの頑強な胸板に突き当たった時、美優は驚いて後ろに飛び退く。 「何でもないわけないだろ?」かずきおじちゃんは溜息混じりに言った。「もしかして、さっきのことで怒ったりしてる?」  美優はウッと呻くなり、黙り込んでしまった。それもある。あるのだが、いくつかの要因が複雑に絡み合った結果、今の感情が生じたのだ。一つ一つ順を追って話しても、かずきおじちゃんにはわかるまい。何よりも、美優自身が話したくない。  しばらく2人は言葉を交わさない状態にいた。先に言葉を発したのはかずきおじちゃんの方だった。 「ごめんな」  美優はギョッとしてかずきおじちゃんの方を見た。何故かずきおじちゃんが謝るのだろう。 「俺も隆史もデリカシーないこと言って、きっと美優ちゃんの気持ちを傷付けちまったんだな。だから、ごめん」  かずきおじちゃんは正面から美優に頭を下げた。美優は唇を噛み締め、黙ってそのふわふわの頭を見つめることしかできなかった。  ああ、かずきおじちゃんはわかっていない。美優の気持ちなんか、本当は理解していない。  かと言って、美優はかずきおじちゃんを責めることができなかった。 「かずきおじちゃん、頭上げてよ。別に、私傷付いてなんかないよ」
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