新たな素材のために

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新たな素材のために

「――うりゃぁぁぁっ!」  人一人分はある大きなナイフでゾウ並の大きな魔狼フオーンの身体を真っ二つに切断した緑の魔法使いは、ニヤリとして八重歯が光る……。 「ふぅ〜……さすが普通のハンターなども危険で近づかん魔狼フオーンじゃ、ちと手こずったわい、さてさて素材は……フオーンの毛皮と爪と眼玉が2個と、こんなもんか」  彼女は魔法具作りが生きがいの、変わった魔女イプルミ。魔狼フオーンを倒して島の外れにある崖の上の住処に戻ったがシワを寄せ浮かない顔をしていた。 「ふむ、素材と言っても地上の魔物のものばかり揃ってしまった……やはりこれ以上珍しい素材となると洞窟じゃな……」  魔法具を作るには魔物の素材を釜に入れイプルミがを施して完成する。異世界マカトラに住む魔物はイプルミがほぼほぼ狩っているため素材はあるが、洞窟等はあえてスルーしていたのだ。 (洞窟には、入ってもすぐ行き止まりでハズレもあれば、奥に続き罠を張る超危険な伝説の眠る洞窟もあるからの。それで一人で入るのは利口ではないな……3人くらいのメンバーが必要じゃ)  そんなわけで……。 「まさかイプルミさんに及びがかかるとは」 「だがイプルミ殿なら協力しよう」 「嬉しいですわ、師匠♡」 「ワシは弟子なんて知らんぞコヨン」 「ケローン、そんな〜、イプルミししょう〜」  イプルミが集めたメンバーとはクマにカマキリ、そして小さなカエル、である。とはいってもクマのオーガは格闘家で、カマキリのカサンには戦士の心得が、一見頼りなさそうなカエルのコヨンは魔法使いである。もともと知り合いの少ないイプルミにはこれが精一杯であった。 「それでイプルミさん、どんな所の洞窟なんです」 「ああそうじゃの、それは、伝説の何かが眠ると言われる通称『魔女の洞窟』じゃ……」  異世界マカトラの東南の崖下にイプルミの言う『魔女の洞窟』があるというがそこは何も無いただの岸壁。だがイプルミと魔法カエルのコヨンには見えていた。 「……何も無いぞ?」 「そうなのオーガ? あたしには見えるけど」 「ここは魔力の無いものは見えんし、魔女の魔力で触れねば開かん」  そう言って薄い魔法の膜に触ると消えた魔法バリアにより古く錆びれた洞窟にオーガやカサンは驚くも階段を下りていくイプルミに続いた……。 「ふんっ!」  オーガの拳で一発のスライム達。 「最初は弱い、ダンジョンの基本じゃ」 「どうして最初は弱いの師匠」 「師匠ではない……冒険者を調子に乗らせて弱った所を襲いかかり戦利品や食料にするためじゃ」 「キャッ、怖いわ、ヒガエルッ!」  カエルの形をした火がスライムを追いかけ火だるまに。 「コヨン殿、魔法は使わなくて良い、オレとオーガにまかせろ」 「カサンありがとう、そうするわ」 「あとはそうじゃな、自分の大切な何かをダンジョンを越えた誰かに託したいのかもしれん」 「あの〜、その眼鏡は?」 「これはデータをとるため……じゃっ!」  巨大なビッグ・ナイフでイプルミもモンスターを倒していくと、 「ししょう、こわい……」 「慈悲なし、だな」  イプルミの言うとおり最初の一階は弱いモンスターばかりでカサンが腕が鈍ると愚痴りつつも、順調に地下十階、二十階と進んで行った。罠も少なく、階層を下りる度に増えては来たが問題無く地下三十階層に差し掛かろうとしていた……。 「いま29階、流石に次は何かあるじゃろ」 「ししょう、怖がらせないでよ〜」 「開けるぞ」  躊躇なく扉を開くイプルミ、 「うわぁぁぁぁっ!」  すると下に続く落とし穴であった。 「……ほほ~う、これで次の階に行くのか」 「イプルミさんっ、ホントかよーっ」 「本当じゃ……たぶんな」 「イプルミ殿、たぶんってっ、あぁぁぁーっ!」  イプルミ意外の3人は祈る思い出落ちていく……。 「グルルゥ」「ガウッ」「ギャアァ」 「お〜、ししょう〜これは~」 「ま〜……モンスターの巣窟じゃな」  構えるオーガ、カサン、コヨン。だがイプルミは仕方ないとため息をしながら耳に付けている小箱をコンコンと突くと何かを出した。 「ほれ、お前たち」 「イプルミさん、これは?」 「フフフッ、イプルミ様の『特性やくそう』じゃ、ピンチになったら使え、ではまず進む階段を見つける、行くぞっ!」  イプルミ達が降りたのはフロアの真ん中で左右どちらかに階段があると睨む。そこでイプルミはオーガと、カサンはコヨンと組んで二手に分かれた。 「はぁっ!」 「おほっ、クマの爪を研いだ正拳突き、頼りになるのぅオーガ」 「まだ苦戦はしないが奥に20、30はいるぞ」 「なぁに、まだまだ魔法具も使っておらん、子どもは元気か?」 「イプルミさん、ああ、元気に育ってるよ」 「良きよき……」 「はあぁぁぁっ!」  カマキリのカサンによる両手の鎌で次々と斬り裂いていた。一方コヨンは、 「アクア・フロッグッ、ピョン・サンダーッ……もうっ、数が多すぎーっ!」  モンスターの数の多さに苦戦していた。 「全てを相手にしていたらキリがない、進みながら邪魔してきた奴だけ倒して進むんだ!」 「そんなこと、言われても……キャッ!」  コヨンは罠により足を引っ掛けて転んでしまった。それを見逃さまいと近くのモンスター全てがコヨンに襲いかかる。
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