恋しい人だけど、会いたくない人

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恋しい人だけど、会いたくない人

いつもの通い慣れた沿線でも、時間によっては行き交う人の色が違う。 笹倉 璃子(ささくら りこ)24才。大学を出て住宅設備会社へ、はれてインテリアコーディネーターとして就職して2年目。 日々の定時退社で目にする人々は、学生や夕食の支度に急ぐ女性たちが多い。 今は金曜日の夜10時を回ろうとしている時間。 自分と同じく疲れ切った人や、少しお酒の匂いを漂わせた人々に紛れ、満員電車に溜息をつきながら乗りこむ。 今日は、勤めている会社のショールームの模様替えがあり、時間外就業で定時より3時間も遅く、クタクタになって帰路に着いた。 満員電車の人混みに押されて、奥の連結扉まで流されたとき、足元の荷物に躓きそうになった。 「キャッ!」 咄嗟に捕まえられた腕の先を見ると、見覚えのある顔が。 「璃子? 璃子だよな?」 「えっ! 国崎先輩?」 「久しぶりだな」 「え〜え、そうですね・・・」 記憶にあるラフなシャツではなく、キリッとしたス―ツを着ているが、2年前と少しも変わらぬ笑顔の国崎 俊輔(くにざき しゅんすけ)先輩。 その変わらぬ爽やかな笑顔が、璃子の胸を締め付けた。 二度と会いたくない。そう思いあの日から彼の面影を消し去っていた。
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