初恋

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唇にされると思っていた美雪は思わずきょとんとしてしまう。 一方の悠太朗は親指の腹で美雪の唇をなぞりながら意地悪そうに笑った。 「もしかしてここにされると思いました? してもいいならするけど」 「し、してほしくない」 美雪は顔を真っ赤にして、必死に否定した。それを見て悠太朗が楽しそうに笑う。 美雪の唇に触れていた指を離すと、「本当は」と呟いた。 「めちゃくちゃキスしたい。けど、美雪さんが俺を好きって言ってくれるまで我慢する」 我慢できるかわからないけどと付け足して、悠太朗は片手で後頭部をガシガシとかいた。せっかくきれいにセットした髪が乱れている。 それを見て思わずくすっと笑ってしまった。 結婚する予定があるとはいえ、一方的にキスをするというのは悠太朗の中では違うと思っているのだろう。 美雪のことが好きだからこそ、美雪の気持ちを大切にしようとしてくれている。 それはきっと悠太朗なりの誠意なのだろう。
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