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「私は早朝、こちらに戻ります」
「共寝が嫌なら、私が出て行く」
「分かりました。じゃあ、毛布だけください」
薄手の毛布を持つと、裸足のままベランダに出た。
南に位置する帝国は、秋でも肌寒さを感じさせない。
夜空の星は、帝国も王国も同じだ。
だから、星を眺めながら心の中で祖母に話しかけた。
「お祖母様。こんな私でも、少しはお役に立てるでしょうか……」
殿下の放った、『何も望まないし期待もしない』という言葉が頭の中でこだました。まるで自分の存在を全否定されたようで、胸が張り裂けそうに痛む。疲労困憊の身体は眠りを必要としているのに、頭が冴えてなかなか寝付けなかった。
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