異種接近遭遇 Part3

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「随分と時間がかかったな」 空気の振動と機械音の混じったようなノイズと共に、短髪の中年らしき男性が現れる。……は?? 軽いめまいを覚えた私の目に映ったのは、白い肌に青い瞳、銀髪の欧米人に見えた。が、堅い口調で話す言語は、ハッキリとした日本語。 「まずは、ご協力感謝申し上げる。確か、柴崎(しばさき)秋良さん、でしたね」 ……よくご存じで。 反応に困る私を意に介さずに、彼は淡々と用件を告げた。 「ライから粗方は聞いてはいると思うので、重要事項だけお伝えする。 今回ご提供いただくサンプリングデータはあくまで友好親善を目的とするもので、殺傷能力のある兵器またはそれに準ずる軍事転用は一切しないとお約束する。 しかしこれは、あくまで貴女が我々の存在を暴露及び漏洩(ろうえい)しなかった場合においてであり、これに反した際はこの限りではないことをご了承いただきたい」 「えっと……秘密を守れば悪いようにはしない、と?」 「了承いただけたようだ。では、こちらに同意を」 言って、ジンなる人物が私と向き合う空間に手をかざすと、宙に文字と記号らしきものが光って浮かび上がる。 指差された箇所を見ると『柴崎秋良』とそこだけ読める字体があった。 そこに触れ、同意しますと言わされると、なぜか『認証完了』と文字が浮かんだ。 ──全盛期のマルチ商法も真っ青な勢いで、そのよく解らない契約に、私は同意してしまった。
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