やっぱり君には会えません

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〈え、ブラック? ユメキ商事ってむしろホワイトじゃね?〉 〈は、、、え、、、なんで俺の勤務先知ってんの〉 〈俺の友達の友達の友達が人事部でさ。人事部つながりで誰がどこに勤めてるとか結構探せるんだよね〉  こわ。こいつの人脈こわ。  友達の友達の友達って、それ友達っていうか全員諜報員かなにかだろ。  ユメキ商事に就職したなんていうとちょっと自慢っぽいから、ヤマシタにすら言ってなかったのに。 〈人事部って、誰がどこで働いてるとか漏らしちゃうんだね……〉 〈まぁ、それは俺と相手の仲だからさ。それはさておき、ヒロトのいるデジタル事業部、いま少し落ち着いてるみたいじゃん? 今月から有給取りまくってるみたいだしさ。だから、どっかのタイミングで会えないかなー〉  やばい。行動すべてが漏れている。これは完全なる情報漏洩だろ。  うちの会社はたしかにホワイトで優秀な社員が集まっているはずだが、リクにはそいつらを惑わせるほどの交渉力があるのか。  誰か助けてくれ。 〈あぁ……たしかに、今はちょうど時間ができたといえばできたかな……。けど俺、腰をやっちゃってさ。有給とって通院してるんだ。あと、足と、胃と、腎臓とかもやっちゃってさ……〉 〈マジ⁉︎ 大丈夫かよ。俺お見舞いに行くよ。家どこ?〉 〈いや、気持ちはありがたいけど、部屋荒れてるから……〉 〈気にすんなよ! なんなら片付け手伝ってやるからさ〉  どんどん逃げ道を塞がれていく。  やばい。とてもやばい。  もう一度スマホを放り投げ、頭を抱えた。どうしたらいいのかわからずリビングの真ん中に座り、人生二度目の瞑想をした。  胃が痛い。このままだと本当に胃をやってしまうかもしれない。  それでもこの状況は打破しないといけない。  そうだ。  目には目を、歯には歯をだ。  
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