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別れ
翌朝、志帆子がいつものように三人を見送ったあと、清矢が迎えに来た。
「もう私がいなくても、三人は大丈夫だってわかったわ。でも……」
志帆子は清矢に言った。
「私が急に消えたら、皆心配しない?」
志帆子は聞く。
「安心して。記憶は修正され、七回忌に皆で志帆子さんを懐かしく思い出すよ。一番つらい時間は、しーちゃん、君が家族を支えてあげたんだ。本物の志帆子さんとの約束を守ってね」
清矢は優しく答えた。
「私はどうなるの? お寺で供養されて焼かれるの?」
「それが君の望みなら。でももし……」
「でももし?」
「望みがあるなら、お寺に行って住職に頼んでごらん」
そう言って清矢が志帆子の額にお札を当てると、志帆子は崩れ落ちて人形のしーちゃんに戻っていた。
「さあ、行こう」
清矢はほつれ、目が取れそうな小さな人形を優しく抱え上げた。
「ただいま――! ママ! あれ?」
夕方帰宅した紬は、自分の言葉に首を傾げる。母を亡くしてもうすぐ七回忌、なんで亡き母にただいまなどと言ったのだろうか?
母亡きあと家族四人で、いや家族三人で頑張って生きてきた。
(なんで四人?)
紬は首をまた傾げる。
(ま、いっか!)
紬はキッチンで弁当の容器を洗い始めた。
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