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初めての2人きりの時間は、あっという間に過ぎていく。そして、ご令嬢の今日が、もうすぐ終わる。
まだ消えない体の昂りを抑え、寝支度を整えたご令嬢の頭を寝かしつけるように撫でる。
「子供の頃に戻ったみたい……ふふ……子供扱いされてるみたいなのに……嬉しいわ」
さっきまで体を重ねていたとは思えない、子供のような無邪気な笑顔。男としての欲求が、庇護欲に変わっていく。
でも、ご令嬢の笑顔が少し曇っていき、申し訳なさそうな様子で呟くように言った。
「……一度だけじゃ、物足りなかったでしょう?」
「なんだ……そんな事、気にしないで」
「気にするわ……」
「大丈夫だよ。だって僕達には、明日も、その先もあるんだから」
安心させたくて、ぎゅっとご令嬢を抱き寄せる。
「もうそろそろ寝る時間だろう?安心してお休み……」
「……いやよ……眠りたくなんかない……」
駄々をこねる子供がそこにいた。僕は思わず苦笑する。
「起きていられるなら、いいよ」
「本当に?悪い子だって怒らない?」
「怒るもんか。ちょっとくらいの夜更かし、僕だってしょっちゅうしてる」
「いい子にしていなくても……いなくならない?」
「やっと結婚できたのに、そんな事するもんか」
「うん……」
嫌われたって離すものか。僕はご令嬢を、強く抱きしめる。
「あなたとする夜更かしなら……きっと……とても楽しいわね……」
その時、21時を知らせる時計の音が響いた。ご令嬢の瞼がゆっくり閉じていく。寂しいけれど、朝まで側にいられると思えば、なんて事はない。
でも。
「…………ねえ……おかしいわ。わたくし……眠ってない」
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