ピンクのサウスポー

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ピンクのサウスポー

 大歓声にドーム球場が揺れた。 『まさに最高潮、マックス・ボルテージだ。ここ東京(フェニックス)ドームは興奮の坩堝(るつぼ)と化した。甲賀フェニックス対風魔レックスの東京ダービーも最終回、大詰めです。スコアは4対3。もつれにもつれた試合も二死満塁一打逆転のピンチ。そして迎えるは天才強打者(スラッガー)風間小太郎だァ!』  実況アナも興奮気味にアナウンスしていた。 「小太郎、小太郎ォーッ」  一気呵成に三塁側、風魔軍(レックス)の応援団から小太郎コールが地鳴りのように響いた。 『ここまで踏ん張ってきた投手(ピッチャー)コンガもさすがに疲れが隠せません。解説の新条さんいかがでしょうか?』  実況アナがたずねた。 『そうですね。明らかに球威も落ちてますしヒジも下がってます。ボールもシュート回転してますから限界でしょう。ここは左の中継ぎ(ワンポイント)リリーフを仰ぎたいところですが現在、甲賀軍(フェニックス)のブルペンは火の車ですからね』  新条が甲賀軍(フェニックス)の苦しい台所事情を解説をした。 『ハイ、新型感染症により甲賀軍(フェニックス)のリリーフ陣は緊急事態です。まさに壊滅状態と言っても過言ではありません』 『ええェ、ここは甲賀軍(フェニックス)の秘密兵器がベールを脱ぐか、どうかですね』 『ハイ、あッと、さすがに見かねた甲賀(フェニックス)の監督 岩爺が重い腰を上げた。ついにここでベールに包まれた秘密兵器『ナックル姫』を投入か?』  監督の岩爺が球審にリリーフを告げた。  すぐさま場内アナウンスが響いた。 『甲賀軍(フェニックス)のピッチャーの交代をお報せします。コンガに代わりまして。ピッチャー咲耶!』  投手交代を告げると、場内には入場曲の『ピンクのサウスポー』が派手に流れた。 「うッおォォーーーッ」  今度は、一気に一塁側が盛り上がった。  大歓声が響く中、ナックル姫こと咲耶がリリーフカーに乗って華麗に登場だ。
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