死が二人を分かつまで

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「離婚には応じない」 微笑みながら裕子は告げた。遼平が「え」と素っ頓狂な声を漏らす。 「…どうせ5年以内に私は死ぬんだから、待てばいいじゃない。それとも、よっぽど結婚歴にバツをつけたいの?」 罪悪感があるというのは本当なのだろう、遼平は裕子の言葉に何も言い返せないのか俯いてしまった。 彼らに慰謝料を請求することもできるだろう。だが、協議する間に裕子は死ぬかもしれない。仮に慰謝料を受け取るところまでこぎつけても、使い切るまで生きていられる保証はない。 それなら、夫婦を続けて治療費を遼平に払わせる方がよほどお金を払わせられる。 それに、がんを患った裕子が5年も生きられれば、遼平たちは手が届きそうで届かない再婚を首を長くして待つことになる。 離婚に応じて簡単に再婚されるより、よほど復讐になるだろう。 「結婚式の時、招待客の前で誓ったじゃない。死が二人を分かつまで、お互いを愛することを誓いますって。……忘れたなんて言わないでしょ?」 END
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