見知らぬ同級生

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「……そうか……そういうことか……ここは、俺の知っている世界じゃないんだ……」  どこまでも広い青空をぼんやり眺めながら、これまでのことをあれこれ考え直していた俺は、不意にある仮説へと思い至る。  もしかして俺は、どこかの段階からこれまで過ごしていた世界線とはまた別の、ほんの少しだけ違う世界線へ迷い込んでしまったんじゃないだろうか?  つまりは、並行世界ということである……。  なら、その段階とはいつだ? やはり、実家へ帰った時だろうか?  ……いや、違う。実家への道中は特に変わったことなど何もなかった……いや待て。そうだ! あの夢だ……。  そこで、俺はある夢のことを思い出した。  それはインフルエンザでぶっ倒れて、高熱に浮かされながら寝ていた時に見た夢だ。  今思えば、それはいわゆる〝臨死体験〟のような夢だった……ふと気づくと俺は美しいお花畑を歩いており、その先にある川の端まで辿り着くと、誰かの声で「まだこっちへ来るんじゃない」と追い返される、まさにベタなパターンのやつだ。  だが、そのお花畑からの帰り、俺は途中、分かれ道にさしかったのである。  その時、俺はなんの考えもなく片方の道を選んで進んだのだが……もしかして、あれが世界線の分岐点だったのだとしたら……。  俺は高熱でいったん死にかけ、蘇る際に世界線を間違えてしまったのかもしれない。  だとしたら、もとの世界線にはどうやって戻ればよいのだろうか?  もちろん、俺の知っているもとの世界へ戻りたいのはやまやまだが、その方法というのが今のところ皆目見当がつかない……また死にかければあるいは…とも思うが、それはそれでリスクが高すぎるし、怖くて試すこともできない。  その方法が見つかるまで、俺はこのまま、この世界で生きていくしかないのだ。  そんなわけで、今も俺は密かに孤独感を抱えながら、誰も知っている人間のいないこの世界で暮らしている……。 (見知らぬ同級生 了)
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