冥王十字陵

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冥王十字陵

 人が死したのちに必ず行く場所、冥界の最深部に、その男の姿があった。 「ふむ。やはりここか。ここにおわすのだねえ。いと高き真の霊王が」  そう言って、とうに死した男が、左目のモノクルの蔓を触った。 「ただねえ。これだ。ホントにあるのかな?こういうことが」  男は、玄室の閉ざされた扉に立っていたのだが、その、何人たりとも開けることの適わない玄室の扉に、彫られた文字の痕跡を見つけていた。  縦に向かって彫られた、5文字の文字列。  1文字目が「お」で、5文字目が「す」だった。  こんな偶然が、あるのかねえ?  その男、左目にモノクルをかけた、スーツ姿の伊達風な男、勘解由小路細が見たものは。 「うちの孫の家の、表札みたいだねえ?」  何千年前に彫られ、誰の手で彫られたのも不明だが、その文字は、明らかに。  「おいでやす」って、どっかの馬鹿んちの表札みたいになっていた。 今度こそ了
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