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美優はヘッドホンに手を伸ばす。「取りたいの?」と尋ねる陽太の声には答えず、ヘッドホンに手を掛けたまま俯いた。 陽太に嫌ってほしかった。一緒にいられないと捨ててほしかった。 でもそれは、こうなってしまった体を理由にではない。 我が儘に、横暴に振る舞う美優に愛想を尽かしてほしいだけだった。 もし、「後遺症が残るなら一緒にいられない」と言われたら、こうなってしまった自分自身を受け入れられなくなる気がしたのだ。 それなら、負ってしまったハンディキャップではなく、別の理由で捨てられるほうがいいと思った。 彼のことが嫌いなわけがない。だからこそ、大好きな人に拒まれることが怖かった。 あぁ、なんて身勝手なんだろう――美優はそっとヘッドホンを外す。すぐに周囲の人々の心の声が頭に入り込んできた。 『俺の気が利かないばかりに怒らせてしまったかな』 陽太の声に、美優は顔を上げる。我が儘に振る舞った美優を前にして、まだ気遣う様子の本音に驚いた。 「……私のこと、怒らないの?」 我が儘に振る舞ったのに。美優は心の中で呟いた。 「怒らないよ。だって、大変な思いをしてるのは美優の方でしょ。八つ当たりのひとつやふたつ、したい時もあるよね」 はらりと涙が頬を伝う。美優は慌てて頬を押さえた。 「泣かないで。これから先もずっと、美優の八つ当たりは俺が受け止めるし、何があっても支えるから。だから、大丈夫だよ」 『俺にできることは何でもしてあげたい』 陽太のことを信じていなかった――美優は、自身の浅はかさに気づかされ、顔を背ける。彼の顔を見ることができなかった。
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