仮想夫婦、はじめました

こうして私たちは、本当の夫婦になった。
実証試験最終日に計測した適合率は、なんと88パーセント。
後でわかったことだけど、私たちと同じように、実験開始時から右肩上がりで適合率が向上して、夫婦関係を継続するカップルが半数を占めたんだと。
あとは、実験開始時には高かった適合率が、終了時には下がってて、離婚を選んだカップルが20パーセント。
実験開始時から終了時までずっと適合率が高くて、夫婦関係の継続を選んだカップルは、わずか5パーセントだった。
そう、つまり、適合率と離婚率の相関関係の実証を目指したこの実験は、ものの見事に大失敗。
政府はマッチング法の話を白紙に戻す決断を下したそうだ。

「なあ、航」
「んー？」
同じ寝室、同じベッド。
すぐ隣に寝ころんでる航に、私は聞いてみることにした。
「結婚生活を継続するために大事なことって、一体何なんだろうな？」
「うーん、なんだろうねぇ……。夫婦でいつづけようって意志、とか？」
「意志？」
「ほら、ボクらほんと正反対で、最初は適合率も低かったけどさ、話し合ってすり合わせて、時にはケンカもするけど、一晩寝たら仲直り、みたいな感じで、今も夫婦関係続けてるじゃん？」
「……つまりは、お互い夫婦でいることを、諦めなかったってことか」
「そう。だから、夫婦でいつづけようって意志が、大切なんじゃないかな、って」
「なるほど、一理あるな」
夫婦でいつづけようって意志があれば、私たちはきっと家族でいられる。
「あ、そういや航に報告しなきゃいけないことが……。あのさ……」
ふたりから３人になっても、変わらず、ずっと。

【おわり】