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デブでブスだった私。
新井真子21歳。
交通事故で死んだ。
ハズだった、が。
見知らぬ土地で目を覚ました。
目を覚ましてから1ヶ月。
分かったことは、ここはアンディカという魔法の国のキイシャと言う街。
私の名前は真子ではなく、ソレイユ。
銀色の緩やかなウェーブの長い髪に、大きな目、整った鼻、ぽってりとした赤い唇、大きな胸だけれど華奢な体。
とても美しい女性になっていた。
年は真子と同じく21歳。
魔法道具や薬を売る魔法使いだ。
街の住民からは「美人だが冷血な魔女」と呼ばれる程気持ちの冷たい人みたいで…
魔法の腕はいいけれど、付き合うのには怖い女と噂されているようだった。
他に、ソレイユの記憶では、彼女はアンディカの1番の勇者、イアンに求婚されたけれど、断った。
イアンはソレイユが手に入らないと分かり、剣で彼女の心臓をひとつきにして殺し、そして逃げた。
街の住人は勿論それを知らない。
それに、私がそれを言ったところで、アンディカ1番の勇者が人殺しだなんて、誰も信じはしないだろう。
そして、ソレイユの肉体に私の魂が何故だか入り、今に至る。
心臓を刺された傷は綺麗に癒えた。
魔法のお店も最近開け出した。
初めは恐々と店を開けたが、元の記憶もあり、なんとかなっている。
と、いうか、お客さんが首を傾げて帰る。
商品を買ったあと、「ありがとうございました」と声をかけると、「ソレイユがお礼を言った」と驚かれるのだ。
一体どんな商売の仕方をしていのか、ソレイユは。
夕方、店を閉めてから、慣れたような慣れていないような美女の体で、夕食を作り、そのスープを飲む。今日は野菜のたっぷり入ったスープだ。
そう言えば。
薬草を取りに行かなければならないんだった。
勇者がいれば、魔物もいる。それを率いる恐ろしい魔王も。
それに傷つけられた時の薬を、あと10個は作らなければならない。
1番売れる商品だ。
質のよい薬草が湖の近くに咲いているのを知っている。
今から行ってもそんなに遅くはならない。
取りに行こう。
ーーーそう思ったのが間違いだった。
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