転生したら魔王の嫁になりました

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薬草を入れる籠を持ち、気分良く出かける。 外はクッキリとした満月が辺りを照らしていた。 月夜に輝く銀色の髪は自分の髪だと思えない程美しい。 湖までは20分ほど歩くが、魔法の国だからか、とても楽しい。 ソレイユの店兼家は街の中心から遠く、森の近くにあった。 街は煉瓦や木造で出来た建造物だったが、一歩そこから外にでると、おとぎ話の森に入ったようだった。 街ですら、まるで海外のおしゃれな田舎の雰囲気なのに、森の中は七色に光る妖精が飛び、金色の花が咲き、低い声で話す木々や、人の言葉を話す鳥がいるのだ。 飽きないはずかない。 最近慣れてくれた妖精と話をしながら、湖まで歩く。 「ソレイユがこんな良い人だとは知らなかったわ。もっと怖い人かと思っていたの。単なる噂だったのね。本当に声をかけてくれてありがとう」 私の肩に乗って、つぶやく蝶々の羽をした妖精はフフフと笑う。 森でも噂になるぐらいの私の悪女っぷりはすごいんだと改めて思う。 少し汗をかきながら、ハハハと笑って返した。 「湖のほとりに咲く薬草も良いけど、その先にある岩山の薬草も質がいいわよ。今度行ってみて。妖精達も怪我をしたら、その葉の汁を使うわ」 「ええ。良い話をありがとう。今度行ってみるわ」 森の中は夜にも光る草花が沢山あるので、夜道でもそんなに危なくはない。が、さすがに岩山ともなると灯りになる草花が少なくなるので危ない。 なので、今度行ってみることにしよう。 妖精との散歩の時間はすぐに過ぎた。 湖に着き、そこで妖精とはお別れした。 薬草はあちこちに生えていて、丁寧に取る。 「大漁、大漁」 1人機嫌よく呟いていると、湖でパシャンと音がした。 魚が跳ねたかと思い、音をした方を見ると湖の中で誰かがいる。 もしかして、満月だから、狼男!? うっかり油断をしていた。 と、そっと逃げようとした時だった。 「待て」 音のした所から、私の居た所まで、結構距離があったのにも関わらず、声はすぐ近くに聞こえ、そして、肩をガシリと掴まれた。 早い! 振り返り、掴まれた肩を見ると、大きな手に、鋭い長い爪、そして、更に上を見上げると、整った男の顔がある。 狼男ではない。 長い黒髪、凛々しい眉、長いまつ毛、高い鼻、薄い唇……かなりの美形だが、その男には見覚えがあった。 「ま、魔王…」 魔法の鏡で、魔王の姿を見たことがあった。 今の私ではない、以前のソレイユが、だ。 その記憶が今の私にもしっかりと、見える。
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