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 一方の郷田組も資金力にものを言わせて助っ人集めに余念がなく、どちらの側も、いつ戦争になってもいいように臨戦態勢をとりながら、落としどころを模索する日々が続いていた。  橘龍二は、原町田に平和が訪れたあかつきには、すっぱり渡世から足を洗う腹積もりで、それを心の支えに日々を送っていた。  郷田組との戦争は、できれば回避したいのが本音だ。  龍二の侠(おとこ)を頼って土方組の門を叩く者が後を絶たず、組内で圧倒的な存在感を有するようになってもなお、無役を貫き、代貸への返り咲きを頑として固辞し続けたのはそれが理由である。  自分が代貸になれば郷田組を刺激することになるし、いざ足抜けしようと思っても、役職が邪魔をして容易に組から離れられない事態も起こり得る。
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