1

3/13
19人が本棚に入れています
本棚に追加
/148ページ
 年が明けた神奈川県三多摩地区は、選挙モード一色となった。  自由党系各派と立憲改進党は、きたるべき選挙に備えて大同団結しようとの機運が高まり、全国的に大きなうねりとなっていた。  これが実現すれば、日本初の衆議院選挙において、自由民権派が圧倒的勝利を収めるのは間違いない。  危機感を覚えた明治政府は、民権派への激しい分断工作を激化させていく。  立憲改進党・党首の大隈重信を入閣させることで、大同団結の芽をつぶそうと謀ったり、運動の中心人物である後藤象二郎を逓信大臣に就任させるなど、なりふり構わぬ取り込み工作を展開し、一定の成果を上げつつあった。  渡世人の世界では、どの政党を支持するかで色分けされ、それぞれの用心棒としての役割が求められる。選挙もまた、戦争なのである。  明治政府の手先となる渡世人は「袴屋」と呼ばれて軽蔑の対象とされるため、大親分と呼ばれる大侠客の多くが、自由と民権を掲げる自由党系各派か立憲改進党への支持を表明した。
/148ページ

最初のコメントを投稿しよう!