1人が本棚に入れています
本棚に追加
/12ページ
「そりゃ言ったけどさぁ、抱いてあげられなくてゴメンな。今はこの娘に夢中だからさ、そもそも第一に絵を仕上げろって言ったのは美波じゃん?」
ホント、軽い男。
ふわふわ雲みたいで、どこにでも浮かんでいるどうでもいい男。
でも綿アメみたいに甘い男。
その背中を殴りたくなる。
何様のつもり?
拳を作るが、栗原の言葉とは裏腹な真剣な顔に殴る気が失せた。
視線をキャンパスに移すと、珍しく服を着た女の絵だった。
いつも栗原の描く女の絵は8割セミヌードの女。そして表情も甘い恋をしている女だ。
でも今描いている娘は違う。
睨みつけるようにこっちを見ている。
目力が強くて惹きつけられる。
小さな顔。
切長の瞳の色は茶色。
あか抜けているわけでもなく、野暮ったいかんじでもない。
あえて言葉を選ぶなら、キレイ系な自分の顔を派手すぎず、最低限のナチュラルメイクで自分の魅力を出している感じ。
栗原の選びそうな女。
嫉妬するわけもなく、羨ましく思うわけもなくただ私は絵に対してそんな感想を抱く。
栗原は人よりも人の感情を読める男。
特に男女の気持ちに敏感で、センサーが付いているみたいにその匂いを嗅ぎ分ける。
そして栗原が今題材にしているテーマが“恋する女“。
それを描きたいが為だけに栗原は私に女を紹介させる。
キャバ嬢、女子高生、主婦、大学生、現役モデル。
いろんな女を紹介したけど、彼女は私の知らない女。
最初のコメントを投稿しよう!