確かに恋だった。ー曜日女になれない女ー

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「そりゃ言ったけどさぁ、抱いてあげられなくてゴメンな。今はこの娘に夢中だからさ、そもそも第一に絵を仕上げろって言ったのは美波じゃん?」 ホント、軽い男。 ふわふわ雲みたいで、どこにでも浮かんでいるどうでもいい男。 でも綿アメみたいに甘い男。 その背中を殴りたくなる。 何様のつもり? 拳を作るが、栗原の言葉とは裏腹な真剣な顔に殴る気が失せた。 視線をキャンパスに移すと、珍しく服を着た女の絵だった。 いつも栗原の描く女の絵は8割セミヌードの女。そして表情も甘い恋をしている女だ。 でも今描いている娘は違う。 睨みつけるようにこっちを見ている。 目力が強くて惹きつけられる。 小さな顔。 切長の瞳の色は茶色。 あか抜けているわけでもなく、野暮ったいかんじでもない。 あえて言葉を選ぶなら、キレイ系な自分の顔を派手すぎず、最低限のナチュラルメイクで自分の魅力を出している感じ。 栗原の選びそうな女。 嫉妬するわけもなく、羨ましく思うわけもなくただ私は絵に対してそんな感想を抱く。 栗原は人よりも人の感情を読める男。 特に男女の気持ちに敏感で、センサーが付いているみたいにその匂いを嗅ぎ分ける。 そして栗原が今題材にしているテーマが“恋する女“。 それを描きたいが為だけに栗原は私に女を紹介させる。 キャバ嬢、女子高生、主婦、大学生、現役モデル。 いろんな女を紹介したけど、彼女は私の知らない女。
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