2 あたしが宮廷女官? それも皇后付きの侍女!

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「一颯将軍が連れてきたあの子がまたひいきされたみたい」 「だいたい、なんであんなブサイクな田舎娘が一颯将軍のお気に入りなの」  蓮花は眉間にしわを寄せ、辺りを見渡した。  宮女たちは慌ててしっと口元に指をたて、声をひそめる。 「聞こえるわ」 「ちょっとやだ、こっちを睨んでる」 「こんなに離れてるんだから聞こえやしないわよ」  しかし、蓮花が険しい目つきをしていたのは別の理由であった。  蓮花には今の宮女の悪口は聞こえていない。聞こえたのはあちこちから耳に入ってくる死人の声。その死人を睨みつけたのだ。  今日もうじゃうじゃいるなあ。  さすが後宮だ。  女の執念、欲望、嫉妬、そんな感情が渦巻いていた。  それどころか、無念を残して死んだ女たちの霊があちこちにいて、普通に生活をしている。  おまけに、どうみても生霊もいる。  さらに、女の園を覗こうとする、不埒な男どもの霊もだ。  とりあえず、生きている者の顔と名前はしっかり覚えておこう。でないと、うっかり死人に話しかけてしまいそうだ。  やばいやばい。気をつけなくては。
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