#8 Tomorrow Never Knows

8/10
23人が本棚に入れています
本棚に追加
/94ページ
     明けて翌日は平日で、いつもの時間に起きて支度をし、家を出て、いつもの駅で穂乃花と一緒に電車に乗り、いつもの道をいつも通り歩いて学校へと向かう。  一時間目に数学の小テストがあったのをうっかり忘れていたけど、まぁなんとかなった。  教室の窓から見える空は朝からずっとどんよりとした曇り空で、そういえば今朝の天気予報では昼過ぎから雨予報になっていたのに傘を持って出るのを忘れてしまった。家に帰り着くまで雨が降らないことを願うしかない。  昼休みにはいつもの席に座って穂乃花と二人でお弁当を食べる。  いつもと違うのは、穂乃花が朝からずっと元気がないことだけだ。 「いつまで落ち込んでるの?」 「……だって」 「っていうか、なんで穂乃花が落ち込んでるの」 「そうだけど、なんか、悔しくて」 「悔しい?」 「……うん」  穂乃花の元気がない理由はわかっているけど、悔しい理由はわからない。 「あたしにもっと恋愛経験とかあれば、乃絵にもっと的確なアドバイス出来たのかなとか、いろいろ考えちゃって」  今日の空のような、今にも泣き出しそうな顔で穂乃花はそう言った。 「なんだ、そんなこと」 「そんなことって……」 「私はこれまで穂乃花に十分過ぎる程助けて貰ったしいつも感謝してるよ。穂乃花と一緒じゃなかったら、私はもしかしたら自分の気持ちさえ自覚出来ないままでいたかもしれない」  お互い彼氏はいたことないけど、恋愛に対して前向きな穂乃花といつも一緒だったから、私は初めての自分の気持ちも素直に受け止められた気がしている。 「乃絵……」 「それにね、私、思ってたより平気なの」 「え、もしかして、諦めるの?」  穂乃花がますます泣きそうな顔になる。 「ううん、だって冷静に考えたら、まだ二人が再会してよりを戻すと決まったわけじゃないでしょ?」 「まぁそうだね、それに昨日聞いた話だと、再会出来るかもわかんないしね」  昨日、杉浦さんと別れ、家に帰って一人になって堪らず穂乃花に電話をした。杉浦さんと一緒にいる間、ずっと我慢していたものが穂乃花の声を聞いて一気に堰を切ったように溢れてきて、泣きながら話をして、電話の向こうでは穂乃花も一緒に泣いてくれていた。
/94ページ

最初のコメントを投稿しよう!