廃屋

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廃屋

慣れない若者が、青い顔をして屈んでいる。ありとあらゆる生き物の死骸が散乱して… 「おい!これ赤ん坊じゃねぇのか?こっちは堀に沈んで居なくなった、商家の丁稚らしいが下半分が見つからねー。もう喰われちまったなんて無いよな?」 それ以上は聞きたくなかった。死骸を見慣れている遺体処理のプロ達も(確か黒鍬と呼ばれた人達も)現場に驚きを隠せない 「こんなの尋常じゃない!何であの人は平気な顔をしているんだ!こんなの尋常じゃない!!あのおかしな女の仕業に違い無いんだ!」 しかし…いい加減に、この若者の喚きを聞きたくなかった様で中の1人が 「そいつは心がどっか行っちまった気の毒さんのことかい?いい加減にするんだな…お前さんはたっぷり楽しんだんだろう?一緒に作業するか?退散するか?邪魔なんだからさっさと選びやがれ…全く!面倒何だよ!」 素っ気なく扱う、青い顔をしたまま若者は、骨の山を仕訳始めていた。それとは別に、はっきりと殺された仏が、第八車にのせられて運び込まれていたので、廃屋の、新しい持ち主が慌て余計な通報したのが騒ぎの発端だった。 「成る程、このままではあの仏迄あの女の仕業にされかねんからな…しかし、ここは空き屋敷で、ゴミ棄て場じゃねぇんだがなぁ…。なんとかなるかい?蘭学の先生よ?例の死骸は見つけたが、これじゃ何の仕業かわかんないだろう?全くあの女も余計なことをしてくれたもんだぜ…。」 散らかり過ぎて、何の遺体か?さっぱり見分けがつかない…遺体処理のプロ達は別の事を悩んでいた。嘆きとも、呟きともつかない声をあげて若者に聞いていた。相変わらず顔色は悪いが、それでも若者に変化があって 「今、人骨とその他に仕分けてます。何せ量が多くて暫くかかりそうですが、問題の下半身も見つかるとは、思うんですけど…見つけてどうするつもりか?わかったんでどうでもいいのかな?その第八車の男に、犯人になってもらって解決じゃおちおち寝ている訳には行かないでしょうし…どうするかは、相談します。文さんの頼みはまあ、見つけて欲しいって事だったんで、何とかなるかもしれません。もうその方は町方に渡して構いませんよ!身元はそっちで調べてもらいませんか?どうせ騒ぎになるなら、派手にした方がいいでしょう?」 居なくなった商家の丁稚は子供の白骨にその着物を着せられて居たのだった。廃屋の異様さは、それだけでは無いが?若者の目的は、そちらではないようだからそう言うと、仏さんは始めて惨状から逃げ出す事となる。 「それにしても、こんなに集めてどうするつもりだったんだろう?」 当の本人はけたたましい音を立てて、座敷牢に入れられていた。誰もまともなどとは思っていない 狂人を咎める術など皆無だった。 「さぁ、だけど狂人を咎める術はないから、狂人に落とした相手に責任は取ってもらいます。後はかなぶんさんが何とかしますよ。仏さんはそのままで、役人を呼んで隠れませんか?」 若者の読み通りの事が起きた。かなぶん事金谷文蔵が、役人相手に丁々発止のやり取りをして…屋敷から、人を払ってくれた。  
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