【産霊】

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ビル玄関前に、黒のロールスロイスが停まった。 素早く降りて、警戒する七山佐介と那智蓮華。 その後方10mには、装甲車並のワゴンが2台。 隊長の神坂梓が、部隊を連れて配置に着く。 「さすが、頼もしい限りだな」 「部隊の全員が、自衛隊や警察の特殊部隊で訓練したとか。しかしレーヤ、役に立つのかしら?」 高野山東京別院、宗務庁ビル。 それを前にして立つレーヤと不知火瑠奈。 すぐ側には、神崎鶴城と日下部真理。 少し遅れて、東山武山、神巳沢蘭、葛西霞。 万が一に備えて、袈裟山岳久と神崎清文、日下部真琴の3人は、各自の拠点へと戻った。 「とりあえず、邪魔な連中の相手をしててくれれば、役には立つ」 呟く様にKANNAが告げる。 その鋭い目は、ビルの中を見透かす様に睨む。 「凄い邪気ね。それもかなりの数。一体何なの?」 蘭だけではなく、全員がそれを感じていた。 ビルから放たれる、死臭と狂気。 「知恩院と同じ奴ら…屍人使いは、やはり枚方陽平じゃなかったか。奴は…今ここに居る!」 「レーヤ、呪鬼は…まだ生きているってこと?」 ずっと幼馴染だと思わされていた。 真理にとっては受け入れ難い真実。 呪鬼ではなかったと分かった安堵。 そして、まだソレが存在することへの恐怖。 「ちょっと待ってよレーヤ! 京都の知念様は、呪鬼を倒したと言ってたでしょ?」 「様って…蘭💧 心眼にも長けたお前が、イケメン如きに騙されるとはな」 「えっ? ば…バカ言わないでよ💦 私は…」 「確かに華柳流は一子相伝ではない…が、あの兄弟が離れている理由は別にある」 レーヤが鶴城に目を向けた。 ここで振るか?…と、思わず目を合わせる。 「え〜と…内緒ですが、兄に調べて貰いました」 レーヤに頼まれて、警視庁とTERRAのシステムを使い、神崎昴が調べ上げた情報。 「華柳流の本源は、柔術ではなく呪術。陰陽師と肩を並べた闇の一派があった様で、天変地異や偉人暗殺を記した史書の至る所に、覇魔薙(はまなぎ)という言葉が残されています」 「それが華柳の正体…でも、曹洞宗(うち)の知念総長に限ってそんなこと…」 「では聞くが蘭、奴の何を知っている? それに、京都(あっち)の知念はなぜ、自分を狙った枚方を追わず、畔柳のもとへ?」 「それは…」 そう問われ知る、己の愚かさ。 初対面の知念に、まんまと騙された屈辱。 「操心術か…くそ!」 そこで東山武山が口を挟んだ。 「私は狩川楓珠と言う(おとこ)を知っている。己が門主である枚方の謀り事を察し、それに背いて火輪を送った楓珠と、楓珠が居ると知り、弟の助太刀に向かった知念。さて…何れが善で、何れが悪か? と問われれたならば、私は楓珠を選ぶ」 正統派を貫く武山。 あまり話さぬ彼の言葉は、確信するに十分。 まだ見えぬ2人の華柳。 善か悪か…仲間か敵か? 「あ、あれは!」 その緊迫した空気を、日下部真理の声が解いた。 その目の先に、皆の目も重なる。 「榊原久遠様と翡翠⁉️」 蘭の声に気付いた2人。 玄関から転がる様に飛び出して来た。 「に…逃げろ❗️」 叫ぶ久遠。 その声に逆らい、命を下す梓。 「行け! 奴らを外へ出すな❗️」 2人の後から、ゾロゾロと現れた屍人の群れ。 すかさず霞が走り、翡翠と目を合わす。 「榊原様、奴らは部隊に任せてこちらへ」 「君は…」 「高野を抜けたお前が、何故ここに?」 翡翠と葛西霞は、かつての仲間。 榊原についていた霞は、久我山正宗に異を唱え、真言宗豊山派へと、身を転じたのであった。
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