3人が本棚に入れています
本棚に追加
/13ページ
◇
クリスマスイブの夜22時、わたしは自宅アパートにて電話をしている。電話の相手は妹の華だ。
「お姉ちゃん、夫にまで逃げられるとはね。さすがすぎる」わたしの話を一通り聞いたあと、華は感心したように言った。「電話も通じないの?」
「うん、何度もかけたけど出ない。ラインも既読にすらならないし」
「マジか。我が姉ながら本当にすごい。ここまで男運がない人って他にいるのかな」
今日はクリスマスイブで、夫である祐介とクリスマスパーティーをする約束をしていた。しかしわたしが仕事を終えて帰宅すると彼は家にいなかった。彼は近所のイタリアンレストランでピアノ弾きをしているが、仕事が入るのは月に1日か2日ほどであり、急に仕事が入ることなんてないはずだ。それなのに今日に限って彼は家におらず、しばらく待っても帰ってこなかった。
「だってお金も持ち逃げされたんでしょ?」華は嫌悪感が滲んだ口調で言う。「いくらだったっけ? 10万?」
「そうだけど」
わたしの経験上、男性が急にいなくなると決まって家から金目のものがなくなっている。だからわたしは現金を保管していた机の引き出しを確認した。なにかあったときのために10万円は手元に置くようにしていたのだ。案の定その10万円は消えていた。
最初のコメントを投稿しよう!