第4話 王子、苦悩する

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 さらに鉱山は辺鄙なところにあり、労働者の確保、並びに労働者の衣食住の確保が課題になったが、ラゥルウント側の商人も都市開発に乗り出し共有の鉱山都市が出来た。フリデン王国にとって鉱山は多くの雇用を創出し経済に活気をもたらすものであった。それはラゥルウントも同じだった。  ラゥルウントとの関係性により、陸路も新たに開けた。以前は海路や、運河を遡って他国へ運び、または他国から仕入れていた。産業もラゥルウントの陸路を利用することによって、販路や交流が広がったのだ。フリデンはラゥルウントの権威による要請を利用した新たな販路を開拓出来た。  ラゥルウントの鉱山での取り分や通行料、関税などは条約により取り決めた。ラゥルウントにとって不条理なものではないはずだ……。  そうは思うが、締結された条約に目を通し、ヴェルターはこめかみを押さえた。王政が変わったのだ。友好的だった王が崩御され、娘が即位した。まだ若い女王はここ最近しきりに辺境伯と会談を設けているのだ。それも、非公式に。  何か、問題があるのか……。しかし、その女王の情報はあまりに少なく、その少ない情報さえあまりいいものではなかった。あまり、という程度ではなく、 「最悪だ」  ヴェルターはこめかみの指をさらに深めた。城はいつも大人の怒声、子供の鳴き声や叫び声が響いている。奴隷の子供がしょっちゅう姿を消す、だとか。 「かの国は、まだ奴隷制度があるというのか」  しかも、子供に何をしようと言うのか。ヴェルターは信じられない思いだったが、噂は噂に過ぎないと自分を戒めた。
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