窓からあの人を探す

1/30
17人が本棚に入れています
本棚に追加
/112ページ

窓からあの人を探す

最近の日課。窓からあの人を探すこと。 「当分帰って来ないの知ってるのに馬鹿みたい…。」 諦めてベッドの脇に座り込む。壁のカレンダーには、初の字と丸が書き込まれている。それを見て思い出す。 「明日から新しい職場か。今度の職場、居心地良いといいな。」 契約終了で前の職場をさよならしてから、次の派遣先が決まるまで今回は3ヶ月も掛かってしまった。 間が開くのはよくあることだけど、今回は、ちょっとテンションが低い。 「あ~ぁ。エネルギー不足!!」 当分帰って来ないあいつのことを考えるだけで、胸がキュンとして切なくなる。顔を見たくてたまらなくなる。でも、会えないし、連絡をこちらからすることも無理なのだ。あいつの仕事柄、それは仕方のないことなのだけれど、自分のすべてが自由な、この3ヶ月に一度も会えてないことが悲しいし、文句のひとつも言えないことが腹立たしい。 「何であいつのこと、好きになっちゃったんだろう。」 膝を抱えて溜め息をついた。
/112ページ

最初のコメントを投稿しよう!