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「そもそもな、アルス嬢。人には似合う似合わないがあるのは当然だ」
「……はい」
「だから、絶対に自分に似合うドレスはある」
どうして、ライナー先輩はそこまで言ってくれるのだろうか。
きょとんとしつつそう思っていれば、彼は笑っていた。
「それに、色気ゼロっていう言葉なんて気にするな。……俺は、アルス嬢のこと魅力的だって思ってるからさ」
「……うぅ」
お世辞だとしても、今のライナー先輩の言葉は胸に感動を芽生えさせてしまう。
なんだか無性に恥ずかしくて、両手で顔を覆った。
「なに? 照れてるの?」
「照れてませんっ!」
そのままぶんぶんと首を横に振って、先輩の言葉を否定する。……説得力、なさそうだけれど。
「まぁ、そういうことだから。別にパーティーに参加したところで、取って食われるわけじゃないんだから」
「……はい」
「命ありゃあ、なんとでもなるさ」
でも、そのたとえはどうなんだろうか。
そんなことを思って、私は少し笑ってしまった。
「お、その調子その調子。アルス嬢は笑ったらめちゃくちゃ可愛いんだから。……な?」
手をどけた私の顔を覗き込んでくる先輩の表情は、とてもいい笑顔だった。
……柄にもなく、顔に熱が溜まるのがわかった。
「わ、たし、少し……ほんの少しだけ、頑張ってみようかな……って」
「うん」
とても単純だと思う。
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