ポケットの中からコイゴコロ

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「わかってるよ。俺も、そいつの見た目に惚れたわけじゃねえし」 「ふうん?」  言ってみ?と私は椅子に座り直す。竜馬はもじもじとして、かっこよかったんだ、と言った。 「そいつ……と、とある部活を一人で立ち上げてさ。どうしてもそのスポーツがやりたいからって……自分が部長になって、イチから部員集めして。部活にするには五人は必要だったし……一人で走り回って頑張ってるの、かっこよかったというか。俺はそれとなく、女子にソイツの噂流して拡散するしかできなかったけど……」  顔が赤いように見えるのは、夕焼けのせいだけではあるまい。私も少し、熱っぽいかもしれない。この教室は、西日が入りすぎる。 「人ができないことをやろうとするやつって、かっこいいじゃん?結局、入ってきた部員のうち三人が初心者で苦労してるみたいだけど……その三人にも週三日の部活で丁寧に教えてるみたいだし。困ってると、いっつも飛んでいって助けてるみたい、だし」 「……なるほど」 「あとは、走ってる姿とか、スポーツしてる姿とかもかっこいいなというか。えっと、あとはその……まあ、誰に対しても優しいところ、とか。そういうかんじ?……て、ていうかなんでお前に全部教えないといけないんだよ、おかしいだろ!」 「ここまで話しておいて今更その反応おかしくね?」  茹蛸のように真っ赤になってから叫ぶものだから、私は思わず笑ってしまった。それで、と彼に尋ねる。 「デートってどこ行きたいの?その子と」 「フットサル場、とか?……サッカー教えて欲しいし」 「さっきスポーツの名前伏せた意味がなくなってますが?……あんた、サッカー得意だっけ」 「得意じゃないから教えて欲しいんだって。俺、ボール投げる方は得意だけど、サッカーはあんま得意じゃないし。ドリブルがまずうまくできないから。そりゃ、カッコ悪いところ見せるだろうけどさ。俺はむしろ、そいつの前でヘタにカッコつけたくないんだよ。お互いありのままの姿を見てるのが一番いいというか、見せられる関係がいいというか、そ、そういうのあるじゃん?」 「はいはい」  なんというか、ウブで可愛いものである。私はくすくす笑いながら、それじゃあと彼の額をつんつんつついた。 「ラブレター、書くの頑張りなさい。今度は家でちゃんと書いてきなよ?でないと、また書き損じの紙が落ちて恥ずかしい思いするんだからね?」 「わ、わかってるよお!」
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