春の嵐 ―四月―

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部の先輩だからじゃない。 もちろん、それは理由の一つで……だけど、それがすべてじゃなかった。 単純に、オレが「負けている」気がしたからだ──男として。 『経験』の有る無しで、なんの優劣が決められるんだ、という奴も、いるかもしれない。 けれども、それは『経験者』が言ってこそ価値のあるもので『無い』人間が何を言ったところで、しょせん負け犬の遠吠えにしかならないはずだ。 同じ土俵にすら立っていないオレが、何を言ったところで、笑い飛ばされるのが落ちだろう。 ……それが解っていたからこそよけいに悔しかった。何も言えないでいる、自分が、みじめだった。 缶に残ったアルコールを一気に飲み干して、もう一つ開けようとした時、玄関のチャイムが鳴った。 姉貴かと思って開けたドアの向こう、いたのは近所の幼なじみの西崎裕美(ゆみ)だった。
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