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部の先輩だからじゃない。
もちろん、それは理由の一つで……だけど、それがすべてじゃなかった。
単純に、オレが「負けている」気がしたからだ──男として。
『経験』の有る無しで、なんの優劣が決められるんだ、という奴も、いるかもしれない。
けれども、それは『経験者』が言ってこそ価値のあるもので『無い』人間が何を言ったところで、しょせん負け犬の遠吠えにしかならないはずだ。
同じ土俵にすら立っていないオレが、何を言ったところで、笑い飛ばされるのが落ちだろう。
……それが解っていたからこそよけいに悔しかった。何も言えないでいる、自分が、みじめだった。
缶に残ったアルコールを一気に飲み干して、もう一つ開けようとした時、玄関のチャイムが鳴った。
姉貴かと思って開けたドアの向こう、いたのは近所の幼なじみの西崎裕美だった。
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