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ようやく結論が出たのか、タダシは勢い良く顔を上げた。
「じゃあ、反対にユカリさんに会いたい人っていないのかな?」
「あたしに会いたい人?」
思わずユカリは腕を組む。
かわいがってくれていた祖母はもう亡くなっているし、これと言って思い当たらない。
困ったようにユカリがため息をついたときだった。
かすかな泣き声が遠くから聞こえてくる。
「……え?」
思わずユカリは振り返るが、背後では無数の花が風に揺れているだけだ。
ユカリとタダシ以外、この花畑に人影はない。
それなのに、なぜ。
その時、タダシの表情がぱぁっと明るくなった。
「いるよ! ユカリさんに会いたがってる人が! ほら、思い出して!」
「だから……急に言われても、困るんですけど!」
そうこうするうちに、泣き声は次第に大きくはっきりとしてくる。
どうやら幼い女の子のようだ。
お姉ちゃん、ごめんなさい。
そう繰り返し泣きじゃくっている。
──そうだ。あの日、あたしは下校途中に横断歩道で……──
※
いつものようにユカリは一人最寄り駅へと向かって歩いていた。
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