急に言われても 私、困るんですけど!

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──ここは一体、どこなんだろう?──    ユカリは、目の前の光景に思わず息を飲んだ。  そこに広がっているのは、一面の花畑。  赤、白、黄色、ピンク、橙。  それこそ思い付く限りの色とりどりの花が、眼前に咲き乱れている。  そして、遥か彼方には川の水が光を反射してきらきらと輝いているのが見える。  が彼女の住む街ではないことは明らかだ。  ではなぜ、こんなところにいるのだろう。  立ち尽くしていても埒が明かない。  とりあえず一歩踏み出そうとした、まさにその時だった。   「こんにちは、ユカリさん。会えてよかった」    突然背後からかけられた聞き覚えのない声に驚いて、ユカリは身体ごと振り返る。  いつの間にかそこには、一人の少年が立っていた。  けれど、もちろんユカリはその少年に会ったことはない。  にも関わらず、どうして少年はユカリの名を知っているのだろう。  不審感が顔に出ていたのだろう、少年はくすくすと笑う。   「はじめまして。僕はタダシ。ある『お役目』のためにここに来たんだ」    タダシと名乗った少年は、礼儀正しく一礼すると今度はにっこりと笑った。
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