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その屈託のない様子に、ユカリは思わず顔を背ける。
そして、不機嫌を隠そうともせずに一気にまくし立てた。
「お役目? 何それ? ここはどこ? あたしはなんでこんなところにいるの?」
怒ったようなユカリに対してタダシはきょとんとしたような表情を浮かべていたが、やがてぽん、と手を打った。
「そうか、ユカリさん覚えてないんだ。一体何があったのか」
「何が? 何って?」
タダシの言葉に、ユカリは思わず瞬く。
次の瞬間、鮮明な映像がユカリの脳裏に蘇った。
下校途中、目前に迫る一台の車。
派手なブレーキ音、ガラスの割れる音、そして……。
「そうだ……あの時、あたし、車に……」
改めてユカリは周囲を見回す。
どこまでも続く一面の花畑、それはよく聞くあの世の光景である。
「そういうことか。なんかあっけないね」
言いながらユカリは苦笑を浮かべる。
そして、目の前のタダシに問うた。
「状況はわかった。で、あなたのお役目って何?」
「ユカリさん、会いたい人いる?」
唐突な問いかけに、ユカリは再び瞬く。
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