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【53】結婚式。
こうして、結婚式当日が訪れた。この王国の結婚式は、嫁ぐ先の家で行われる。私は前日からエルディアス侯爵家に泊りがけで準備をした。エルディアス侯爵家の使用人達やメアリ様に手伝ってもらいながら、朝も早く起きてウェディングドレスに着替えた。
白いドレスを身に纏い、大広間にて、グレイルと並んで立つ。大勢の招待客に言祝がれながら、教会から招いた聖職者の前で愛の言葉で誓いあい、指輪の交換を行った。
忙しいという感覚の方が大きくて、緊張もあったが、その場にいる事に必死になってしまった。しかしそんな私の隣で、グレイルが気遣うように声をかけてくれたので、一人ではないと思うと頑張ることが出来た。
結婚式の全てが終わったのは夜の八時を回った頃で、疲れきっていたが、その後私は入浴してから初夜に備えることになった。結婚式の夜、同じ寝台に入るまでが儀礼らしい。
今日から私とグレイルの寝室は、一緒になる。
用意されていた南館の寝室は、テーブルと長椅子のセットもあるが、大半が巨大な寝台で埋められている。二人で寝転がるには大きすぎるほどだ。ちなみにこの国では、子供が生まれた場合は、幼少時から別室で乳母が育てるそうで、両親と同じ寝台で眠る事は無い。
寝室の他に、グレイルの書斎や私室、私個人の私室も用意されているが、そちらにも寝台は無い。基本的に、夫婦は二人で眠るそうで、一人で寝たい場合は臨時で客間の寝台を用いると聞いた。
私はグレイルより先に寝室に来たのだが、結婚式の疲れがあって、長椅子に座ったままでうとうとしてしまったらしい。
「ん……」
目を開けたのは、何かが髪に触れる気配に気づいた時だ。いつか、生徒会室でもこんな事があったなと感じつつ視線を向けると、グレイルが私の肩に柔らかな薄手の毛布をかけてくれていた。
「起こしてしまったな」
「ううん。ごめんなさい、私こそ眠ってしまって」
「目が覚めたのなら、寝台に移動した方が良い。あちらで休もう」
グレイルはそう言うと、そっと私の頬に触れた。頷いて私が立ち上がると、グレイルが私を抱き寄せ、寝台へと促してくれた。そして寝台へと横になると、グレイルが私を腕枕した。
「今日は疲れただろう?」
「うん」
「――眠ろう」
「でも、今夜は初夜なのに……」
「無理をさせたくない。それに、今日からはいつでも一緒に眠れるんだ。焦る必要はないだろう」
グレイルが優しく私の髪を撫でた。すると眠気が再びこみあげてきて、私はそのまま眠ってしまったのだった。
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